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2010年10月21日 (木)

[柔道の父・嘉納治五郎が残した「道」を伝える言葉]世界柔道選手権大会のメダルに見た灘中高の校是「精力善用 自他共栄」!

柔道の2010年「世界選手権大会」が、今年は東京の国立代々木競技場第一体育館で9月9日~13日にかけて開催された。柔道の世界選手権大会が東京で開催されるのは、1958(昭和33)年の第2回大会以来、実に52年ぶりのことだったという。

柔道の父といわれる嘉納治五郎が、明治15年に東京・下谷で起こした講道館柔道。1956(昭和31)年に、東京・蔵前国技館で「第1回世界柔道選手権大会」が開催された後、世界で行われてきた大会が、柔道の発祥地である日本に再び戻ってきたことになる。

5日間かけて行われたこの大会期間中に、日本代表選手団は、10個の金メダル、4個の銀メダル、9個の銅メダルという、合計23個のメダルを獲得。近年では最も好調な戦績を残したことは、テレビ放映などで度々伝えられた。世界選手権大会通算「100個目の金メダル」も57キロ級の松本薫選手が獲得した。

そういえば、日本代表選手が最も多くを獲得した、今回の大会のメダルには、生誕150年を記念した嘉納治五郎の姿と、彼の教えである「精力善用 自他共栄」の文字が彫られていた。

柔道に関わってきた人ならばともかく、一般にはあまり馴染みのないこの言葉だが、実は、神戸の灘中学・高等学校の校是でもあった。同校のWebサイトで「沿革」を見てみると、「当時東京高等師範学校(現筑波大学)校長兼講道館館長であった嘉納治五郎先生を顧問に迎えて尽力いただき、校是にも柔道の精神『精力善用』『自他共栄』を採り翌3年に開校の運びとなりました」とある。

嘉納治五郎は、当初いくつかの流派の柔術を学び、それぞれ奥義に達したが、他の流派にも興味をもち、研究に打ち込み、諸流のよさをとりいれ、さらに自らの創意と工夫を加えた技術体系を確立。

理論面でも柔術の「柔よく剛を制す」の柔の理から「心身の力を最も有効に使用する」原理へと発展させ、新しい時代にふさわしい技術と理論を組み立てたという。

この原理を「精力善用」の標語で示し、これこそ柔道技術に一貫する原理であるとともに、社会生活すべてにおいても欠くことのできない重要な原理であることを明らかにしたとされている。

そして、この原理を実生活に生かすことによって、人間と社会の進歩と発展に貢献すること、すなわち「自他共栄」をその修行目的としなければならないと教えた。

自らが掲げた、自己完成をめざす柔の「道」。術から道へと名をあらため、その道を講ずるところという意味で名づけられたのが「講道館」という名だった。

自身も非常に勉学に熱心で、柔道の研究に必死で取り組み、一方では国内外で体育の奨励活動にも尽力し「日本体育の父」ともいわれた嘉納治五郎は、青少年の教育にも情熱を注いだ。

また、治五郎は灘中学校の創立にも情熱を傾け、当時、中学の先生を養成する東京高等師範学校(現筑波大学)の校長を25年間勤めた治五郎の愛弟子であった、38歳の真田範衛を校長に招聘し、灘中高の歴史がスタートした。その灘中学・高等学校に、現在も掲げられる校是が、この「精力善用 自他共栄」とされたわけだ。

ところで、今回の世界柔道選手権大会の結果に話を戻すが、渋谷教育学園渋谷中高の出身で、次回オリンピックの金メダル候補として期待されている女子52キロ級の中村美里選手は今回、日本人選手同士の決勝となり、西田優香選手に惜しくも判定で敗れた。

48キロ以下級の福見友子選手と浅見八瑠奈選手、63以下キロ級の上野順恵選手と田中美衣選手も、同じく日本人同士で決勝を戦っている。日本柔道のレベルは、いまもこれほど高い。

「精力善用 自他共栄」。いずれにしても、ユニークな標語であり、校是であることに変わりはない。しかし、日本柔道の心がこの言葉に込められている。

 

Medaru20102▲今回の世界柔道選手権大会のメダルには、柔道の父・嘉納治五郎の姿と「精力善用 自他共栄」の言葉が彫られていた。

 

Nadakoumon ▲灘中学・高等学校の校門。いまも校内には「精力善用 自他共栄」の書が掲げられている。

 

 

【初出:NettyLandかわら版2010年10月号】
(北 一成)

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