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2008年12月25日 (木)

入試問題から学校を探る 算数の問題にみる吉祥女子中学校の教育理念

数多ある女子校の中で、御三家に次ぐ進学校としての地位を不動のものとしつつある吉祥女子中学校。

2008年春の現役生だけの合格実績を見ると、東大2名をはじめとして国立大学に30名、早稲田42名、慶応23名、上智17名を含めた私大への合格者は実に787名を数える。さらに、このうち医科、歯科、薬科大学へは国立、私立を合わせて34名の合格者を輩出した。当然複数合格もあるが214名の卒業生数に対しての数字であることを考えると立派というほかない。また、同校には芸術コースも設置されており、こちらも卒業生40名に対して、芸大、音大への合格者は57名だ。これらの数字だけを見ても、生徒の中にある、あらゆる可能性を引き出し、育て上げていることは否定の余地がない。

そんな同校の入試問題の中から、2月1日の算数の問題を取り上げてみた。

P25

掲載した問題をご覧いただければ分かるとおり、何の変哲もない商と余りと約数に関する問題だ。上位校を目指してきた受験生であれば、何度となく演習してきたことであろう。ただ単に答えを出すということに関しては何の苦もない問題なのだが、ここで敢えて取り上げたのには理由がある。まずは囲みの部分を見ていただきたい。ここに書かれているのは、この問題を解くにあたっての考える手順だ。一見するとヒントのように見えるが、実は問題の構造そのものについて書かれているのだ。これを読んで、頭の中だけで理解しようとするのは少しばかり難儀なことかもしれない。実際にここに書かれた順番の通りにリンゴとミカンの絵を描いて考えてみると理解できるものと思う。③の段で言っていることは、元々同じ余りがでるのだから、ミカンの余りからリンゴの余りを取り除いて、余りの部分を確定してしまえば、残りのミカンは子どもにちょうど配れる個数になるということだ。ここで、もう一度①、②と振り返ってみると、③の作業は元々あったリンゴとミカンの総数の差をとることと同じであることが分かるだろう。ここに吉祥女子で展開されている数学の授業が垣間見られると言ったら飛躍を感じるだろうか。算数では、そのほとんどのことを具体量を用いて考え、理解していくのに対して、数学では抽象的な数の操作に歩を進めることになる。ここに数学での躓きの大きな要因があるのだが、どんな数を扱うにしろ本質の理解が不可欠であることに変わりはない。速さの三公式が理解できずに方程式は立てられないのだ。この囲みの部分には、きちんと本質を捉えさせた上で数学の世界へと誘う意識が感じられるのだ。卒業生の15%が医歯薬系に合格している現状と合わせて考えると、確固たる基礎を築いた上で柔軟な思考力を養うような授業が展開されているのだろうという推察ができるのではなかろうか。

【初出:NettyLandかわら版2008年11月号】
(藤崎 正彦)

スポーツに読むヒント

世界中を沸かせた北京オリンピックが終わり、プロ野球も終盤を迎えた10月、大手書店ではスポーツ関係の書籍が新書・文庫化されたものが目立つ。今回は3冊の本を紹介したい。

Kitajima2_2 『〈勝負脳〉の鍛え方』は、脳外科医で、救命救急患者の治療でも画期的な治療法を開発してきたという著者の林成之氏が、オリンピックやプロスポーツでトップレベルの活躍をする選手の脳の働きに触れ、「勝負脳」の鍛え方や「頭がよくなる秘訣」を紹介している

ここでは記憶を強くする方法に始まり、覚えたことをパフォーマンスする知能、つまり「表現知能(表現する多重知能の能力)」にも触れ、スポーツや受験、ビジネスなど、あらゆる勝負で勝つための能力を鍛える必要性と、この「勝負脳」を自分のものにするコツが述べられている。スポーツが好きな受験生や保護者にとっても、中学受験の励みやヒントになる内容がある。

Hushimi2_3 『気づかせて動かす~熱情と理のマネジメント~』は、かつて伏見工業高校ラグビー部監督として同校を全国大会に導き、TVドラマ『スクール・ウォーズ』のモデルや「プロジェクトX」の登場人物ともなった山口良治氏と、山口監督が率いて伏見工業が初めて全国制覇を果たした時のキャプテンで、後に日本代表チームの監督も務めた平尾誠二氏による対談をまとめたもの。

大切なのは何より生徒を信じること、人が自分を変えることができるのは「気づき」によること、などについて両氏は触れ、スポーツの意義について「自分の可能性に挑戦できる、その結果をいつも自分のものとして受け止めることができるという意味で、すごく教育的な価値があると思う」(山口氏)、「スポーツの教育的価値とは、ひと言でいったら、『できなかったことができるようになる』ことだとぼくは思います。しかも、自らの意思で、自らの努力でそれを勝ち取ることができる」(平尾氏)と結んでいる。これから志望の中学に合格~入学し、スポーツをしてみたいと考える子どもたちにも伝えたいメッセージが含まれる一冊だ。

Kanemoto2_2 『覚悟のすすめ』は、阪神タイガース外野手で、この2008年に400本塁打、2000本安打を達成して名球界入り、今シーズンも連続フルイニング出場記録を更新した鉄人「アニキ・金本」の初著書。今シーズンも最後まで優勝の期待と話題を撒いた阪神タイガースで、40歳にしてリーダーシップをとる金本選手の、プロスポーツ選手としての“覚悟”が淡々と述べられている。これは中学受験生には直接は関係ない内容かもしれないが、やはり阪神は面白いし、金本選手は頼もしい。個人的にはとても面白く読めた。

Kanemoto01_2これらの本に共通して述べられているのは、受験や勉強についても、スポーツから学べる貴重なヒントがあることと、スポーツが人をいろいろな面で成長させてくれるものであることだ。

中学受験生の諸君にも、この先の中高6年間でそういうスポーツの楽しさに実際に触れて、健やかに大きく成長していってほしいと思う。

【初出:NettyLandかわら版2008年11月号】
(北 一成)

2008年12月 5日 (金)

入試問題から学校を探る 理科の問題にみる学習院女子中等科の教育理念

学習院女子中等科は卒業生の約7割は学習院大学へと進学するが、その影で他大学への合格実績を着実に伸ばしているのをご存知だろうか。2008年春の他大学への現役合格者数は東大2名を含め国立大学が10名、早稲田、慶応、上智の合計39名をはじめとした私大の合格者数が合計146名となっている。単純に卒業生数を分母とした他大学への合格率は実に85%にも上る。あまり取り上げられることはないが、立派な進学校なのだ。その内訳も医科大、薬科大等の理系から、音大、美大等の芸術系まで多岐にわたる。これは、自主性を重んじ、自分の頭で考え行動できる女性を育てることを進路指導においても徹底していることの証であろう。

P17 さて、今回取り上げた問題の素材はメダカという慣れ親しんだものだが、教科書的な知識にとどまらず、自分の頭を使って考えることを要求している。問題文の第1段落は食物連鎖の問題だが、大きな魚や鳥以外のメダカの天敵が2つ、すぐ思いつくだろうか。水辺の生き物の生態をじっくりと思い起こしてみて、やっとザリガニやヤゴ、タガメといった水生昆虫が浮かんでくる。しかし、これさえも実体験があるからこそであり、ヤゴやタガメなど見たこともない受験生の方が圧倒的に多いのではなかろうか。そうであれば、あとは持てる知識を総動員して自分の頭で考えてひねり出していくしかないのである。そのためには、普段から様々なことに興味、関心を持ち、身の回りに起きる現象を観察したり、自ら調べたり、考えたりということがどうしても必要となる。

第2、第3段落ではメダカとヒトのからだのつくりを比較している。メダカの5種類のひれのうち、ヒトの手と足に相当する部分を答えさせているのだが、ここでもなぜそのように考えたのかを記述しなければならない。さらに第4段落ではメダカが絶滅危惧種に指定されたことを取り上げているのだが、ここではメダカが減少した主な原因を2つ記述しなければならない。絶滅危惧種自体は聞きなれた言葉であるが、ここでも単語として知っているだけでよい訳ではなく、何故絶滅の危機に瀕しているのかということを一歩進めて考えておくことが必要だ。環境問題が様々に取り上げられる昨今、生活の場を失っている生物が多いことや、外来種に駆逐されていく生物について見聞きする機会は少なくないはずで、やはり社会現象や自然科学に対する自発的な学習姿勢が求められているのだ。

「自ら学習に励むこと」を大切にすることが「その時代に生きる女性にふさわしい品性、知性を身につけること」の根幹であると言えよう。

【初出:NettyLandかわら版2008年10月号】
(藤崎 正彦)

クラブの継続と大学受験 高3の夏~冬までスポーツに励み、大学受験に挑む中高一貫生

Sports01

この夏は、北京オリンピックの話題で世界が沸いたが、国内でも各地で中学生・高校生によるさまざまなスポーツの大会が行われた。埼玉で行われた「全国高校体育大会(インターハイ)」は、今年も“夏の風物詩”として、高校生らしい熱戦を見せてくれた

ところで高校生のスポーツの大会は、だいたいの競技(種目)で、この夏のインターハイが大きな目標となっており、夏休み前の6~7月にかけては、この全国大会の出場権をかけて、各都道府県で予選大会が行われる。

私立の進学校の運動部には、高2の夏や秋の時点で、いわゆる現役選手を引退し、1年数ヶ月後の大学受験に備えるケースもある。それは各学校やクラブの方針によるものだ。しかし最近の様子を見ていると、多くの競技で高3の夏まで活動を続けている進学校が、以前より多くなったように思える。

そしてそれは、好きでそのクラブ活動を続けている生徒にとって、大学受験に向けた勉強をするうえでも、かえってプラスになるという私学の先生は多い。勉強とクラブ活動をきちんと両立するためには、体力はもとより、意思力、集中力、気持ちの切り替えの早さ、上手な時間の使い方などが必要になるからで、しかもそうした力は、大学受験だけでなく、その先の人生でも役に立つ力となるからだ。

なかには、夏休みを終えても、まだ現役を引退せずに、その上の大会をめざす高校3年生がいるクラブもある。冬に重要な(高校生最後の)全国大会がある、サッカーやラグビー、バスケット、陸上などの競技である。東京では国学院大学久我山や世田谷学園、暁星、本郷、城北、神奈川では桐蔭学園や桐光学園などが、こうしたウィンタースポーツの強豪校で、そのクラブの高校3年の選手たちは、すでに大学受験勉強のスパートに入っている友人たちを横目に、真冬の全国大会をめざして、この時期にもまだ練習を続けている。当然、彼らの保護者には大学進学についての心配もあることだろう。

しかしほとんどの場合、こうして高校生活の最後まで、好きなスポーツでがんばり抜いた選手たちは、大学受験・進学も、うまく成功させていることが多いという。なかには6年間一緒のクラブに打ち込んできた友人も多く、やはり同じ大学進学の目標を持つチームメイトとともに励ましあい、ときには競い合って勉強にも打ち込む関係が、彼らの励みになっているに違いない。また、同じように最後までがんばって大学に進学したクラブの先輩たちから、励ましやアドバイスをもらえることも大きな力になる。

両立は大変かもしれないが、高校生活の最後まで、そんな充実したクラブ活動を続けられることも、私立中高一貫校の大きな魅力ではないかと思う。

この夏までクラブを続けた多くの高校3年生も、もちろん立派だったが、さらに9月以降も現役選手としてスポーツに打ち込む私立中高一貫校の高校3年生全員の、めざす大会での健闘を祈るとともに、大学受験・進学の面でも成功を願いたい。

【初出:NettyLandかわら版2008年10月号】
(北 一成)

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